一生分のときめきをくれた人
9月に入った。
この月は、私の大好きな人の誕生日が3つもある。それもすごく近い日付で。
まず、小学校の頃からの親友マミちゃん。
彼女の誕生日は9月17日だ。
この方の誕生日は9月18日である。
そしてそして。漫画『キン肉マン』に登場するキャラクターのロビンマスク。
彼の誕生日も、早霧さんと同じ9月18日だ。どうやら私は、このあたりの日付に生まれた人に惹かれる運命にあるように思う。
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最近何かと囁かれている宝塚だが、早霧さんの所属していた雪組は、以前から人間関係が良好だったように見える。
それなりの人数が集まっているからには、ちょっと問題のある人も中にはいるかもしれないが、おおむね仲良しといった印象だ。トップスターの方々は、気取らず、それでいて面倒見のいい、さっぱりとした気性の人が続いていた。
早霧せいなさんは、『ちぎ』という愛称で親しまれていた方なので、以下ちぎさんと呼ばせていただく。
ちぎさんは、劇団のトップスターというよりも、すごくモテる部活のキャプテンといった雰囲気の人だった。明るくてノリがよく、けれど舞台に打ち込むは姿勢はものすごく真面目だ。
繊細な面もあり、ご自身の苦手なことやコンプレックスと向き合いながら、切磋琢磨してらしたことを、対談後のインタビューを呼んで知った。そりゃそうだよな。あの広い劇場を連日超満員にしなければいけない重圧は、学校の体育館に立った経験ぐらいしかない私には、計り知れないものである。
ちぎさんを好きになった理由は、まさしく一目惚れだった。
観劇に行った際にパンフレットを買い、「この世にこんな理想的なお顔の人がいたなんて!」と、稲妻に打たれたような衝撃が走った。
その後、彼女の性格など、知れば知るほどもっともっと好きになり、それまでは宝塚大劇場にしか行ったことがなかったのに、バウホールや地方公演にまで追いかけていくようになった。ちぎさんがトップスターとして輝いていらした数年間は、私の遅れて訪れた青春と言っていい。
トップスター就任の直前、ちぎさんのディナーショーが行われた。
私はそのチケットをどうしても取りたくて、会社を抜け出し、半泣きになりながら繋がらない電話を怒涛のごとくかけまくった。今はどうか知らないが、その当時、宝塚のディナーショーのチケットはオンライン販売がなかったのだ。
もう駄目だ…と諦めかけた矢先、ようやく電話が繋がり、無事チケットを取ることができた。
人生初のディナーショーだったが、まさに夢のひとときであった。
友人の結婚式へ行くときの何倍も気合を入れてドレスアップし、雪組のスターさんたちも大勢見に来ている会場内で、宝石のごとく輝くちぎさんの姿を間近で見る。
ちぎさんが近くへ来たとき、勇気を振り絞って手を差し出すと、なんと私の目を見つめながら握手してくださった。
その瞬間、ベルばら時代の少女漫画さながら、私の視界いっぱいにピンクの薔薇が咲き誇ったことを、今でも鮮烈に覚えている。
あんな夢のような瞬間は、後にも先にもなかった。一生分のときめきを、あのとき使い切ったのではないかとすら思えてしまう。
ちぎさんが対談なさるとき、それはもう大泣きし、3回も公演を見に行った。
そのうちの一回は最前列で、転売などではなく運だけで入手できた席だった。私のちぎさんへの愛を、神さまが聞き届けてくださったのだと思う。私という女は、無神論者のくせに、こういうときだけ都合よく神さまという言葉を持ち出すのだ。
ちぎさんの引退後も、推しのスターさんは何度かできたが、あれほど心を賭して追いかける人にはもう出会えない気がする。
一生のうちで、あんなにもときめいた日々を送れたことを、心から幸せに思うのだ。ちぎさんには本当に感謝したい。
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他ふたりのことについては、また別のブログで書きたいと思う。
そんなこんなで、9月は私にとっておめでたい月だ。楽しく過ごせたらいいなと思う。

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早霧せいなさん。
こんなにお美しいのに、面白い性格で三枚目の役も多く演じた。