長年の推し
HUNTER×HUNTERの新刊が発売されたので早速読んだ。
私とこの作品との出会いは、中学2年のとき。
ちょうど天空闘技場のあたりが連載されていて、アニメ化が始まる直前だった。友人に薦められて読んだところ、見事にハマってしまったのだ……ヒソカに。
ハマったきっかけは、天空闘技場でついにゴンが彼に挑む話だった。
友人の持っていたジャンプを読ませてもらい、彼の強烈なキャラクターにショックを受けた。と同時に、なぜか忘れられなくなってしまい、気づけば沼に落ちていたという感じだ。周りの子たちは皆、キルアやクラピカのファンだったので、変わった奴だとおかしな目で見られた。
人生初の推しがヒソカだったではないが、こんなに長いこと推し続けている人は他にいない気がする。
芸能人だったり漫画やゲームのキャラクターだったり、私には常に推しがいて、定期的にコロコロ変わるのだが、そのいつの時期にも必ず彼の存在は胸の中にあった。
何がそんなに好きなのかはわからない。
私が好きな他のキャラクターたちと、彼のタイプにはほとんど共通点がない。まさに特別枠というやつだ。
まず顔が好きで、スタイルが好きで、最初は変だと思っていた服装も今となっては可愛く見えるし、何より人をおちょくっているような言動や捉えどころのない性格にきゅんとなる。
あんなに長いこと登場していて、見せ場も結構あるのに、いまだにどういう人物なのかよくわからないところもいい。
連載でも読んでいたが、久々に登場した部分を今回単行本で読み直して、ますます謎が深まったな~と思う。
いつもセリフの後についていたトランプのマークが、今回はほとんどない。一か所だけだ。うっかり書き忘れてしまった、なんていうミスを冨樫先生がするはずはないので、何か理由があるのだと思う。それを考えるとまた深みにはまる。
あと、映画館にいたけど、いったいなんの映画を見ていたんだろう?
というか、映画なんて見るんだ…と意外だった。そういうのにまったく興味のないタイプだと思っていたが、退屈でうたた寝していた、という様子ではなかった。しっかり鑑賞していたのだろう。
本当に、考えれば考えるほど面白い。
だが残念なことに、話の本筋のほうは、おそらく半分ぐらいしか理解できていない。
私の頭が悪いせいだろうか。登場人物が多くて覚えきれない上に、抗争の内容が複雑で、だんだんこんがらがってくる。
とりあえず、大雑把に理解できていればいいかな、と思うことにした。
なんとなくだが、この長年続いたHUNTER×HUNTERも、いよいよラストに向かっている雰囲気がある。
ただ、この話の結末ってなんだろう? 今、ストーリーは何に向かって進んでいるんだったか。
主人公ゴンの当初の目的である『父親に会う』はもう達成している。次の目標は『ヒソカと戦って勝利する』あたりかと思っていたが、だんだんそんな感じもなくなってきた。
少し前に、冨樫先生がHUNTER×HUNTERの結末について話をしていた。
ご本人の中には3種類の構想があり、
A:読者が納得するラスト
B:評価が半々に分かれるラスト
C:皆が納得しないであろうラスト
なのだそうだが、ご本人はCを書きたいという。
私はすっきりしないENDというのは好きではないので、できればやめてほしいなあ…と思うのだが、ストーリーにおいて作者というのは『神』だ。読者のほうがあれこれ注文すべきではないと思う。だから冨樫先生に任せるしかない。そもそもラストまで描き切ってくださるのかもちょっと怪しいから、描いてくれるだけありがたいとも思う。
ただひとつだけ。
私が願うのは、ヒソカが最後までヒソカらしくあってほしいということだ。
推しキャラが死ぬのはつらいし、今まで何度もそれを味わってきた。
けれど不思議と、私はヒソカに対してだけは、「死んでほしくない」と願ったことがない。
あれだけ人を殺しているのだから、最後は彼本人が誰かに殺されても仕方ないと思う。だいたい『少年漫画の悪役』という立場なのだから、生き延びることを願うだけ無駄だ。
ただし、くだらない死に方をするのだけは勘弁してほしい。
「えっ、そんな奴に!?」という雑魚にやられたり、何かの爆発なんかにうっかり巻き込まれて終わったり、最後の最後で命乞いをするとか、そういうのはすごく嫌だ。
これぞ彼の人生、というラストを飾ってほしい。
そこに彼の生い立ちや心の中にあるものが、ほんの少しでも感じ取れたらなおのこと嬉しいと思う。
まあ、ひょっとしたら普通に生き延びて終わりかもしれないけれど。それもまたよし。
何しろ冨樫先生にはお体に気をつけて、自分の中の世界を悔いのないよう描き切っていただきたいと思う。心から応援しています。
