詐欺に怒る母
今から3、4年前の話だったと思うのだが、突然、母から怒りの電話がかかってきた。
話を聞けば、新聞屋が詐欺を働こうとしてきたという。
実名を出して変に問題となっても困るので(マスコミって怖いしね…)、ここではX新聞としよう。
ある日、X新聞を名乗る男が家にやってきて、「来期分の契約を継続するので、お金を払ってくれ」と言ってきたそうだ。
確かにうちの両親は、かつてX新聞をとっていたが、そのときもう別の新聞をとっていた。X社とは契約をやめて、3年ほどが経っている。
応対した母が「うちはそちらとは契約してないですよ」と言うと、男は契約書のようなものを出してきた。するとそこに、父の名前が、あきらかに他人のものとわかる汚い字で書かれている。
母が怒り、「なんやの、これ! 詐欺やん!」と言うと、男は、
「僕は詐欺なんてしていません。詐欺師呼ばわりしたことを謝ってください。名誉棄損で訴えますよ」
といった内容のことを言ってくる。
あまりにも開き直った態度に、母はだんだん怖くなってきたようだ。しかし応援を呼ぼうにも、家には犬と猫しかいない。
そこで近所の奥さんを呼び、応援に加わってもらった。
例のインチキ契約書を見た奥さんは、「うち、アンタのとこの新聞とってるけど、こんなことしてるんやったらやめるわ!」と怒った。すると、さすがに男もたじろいだようで、「僕は詐欺師じゃありません」など、頓珍漢な捨て台詞を吐いて去っていった。
父が帰宅した後、母がそのことを話すと、案の定父は怒った。
けど待てよ…。本当のX新聞の人が、そんなことをするとは思えない。
X新聞の名を騙る詐欺が、この近くで横行しているのかもしれないから、注意喚起のために教えてあげたほうがいいな。
ということになり、ほとんど親切心で父はX新聞の配達店へ電話をかけた。
「今日、〇〇っていう男がうちに来たんだけど…」と言うと、なんと。その男はいた。しかも電話に出てきた。
「今すぐ謝りに来い!!!!」
と父が怒鳴ると、またしても男は堂々とやって来た。
そして、
「あなたの奥さんが僕を詐欺師呼ばわりした。謝ってください」
とまだ言う。
面の皮が厚いのを通り越して、もうアタマがどうかしてるんじゃないかと思えてくる。
しばらく家の前で喧嘩になり、「二度と来るな!」と追い返したそうだが、男が訴えるだのなんだの最後まで言っていたため、両親ともに少し不安になったらしい。
それで消費者センターに連絡したところ、「そういうケース、最近増えてるんですよ」とのこと。
また、そちらが訴えられるようなことはないです、とのことだったので、両親は安心して電話を切った。
そして翌日、母から私にブチギレ電話がかかってきたというわけだ。
無害で済んだとはいえ、男の態度と言葉への怒りがなかなか収まらなかったらしい。
この話を受けて、私がTwitter(当時)に注意喚起として、ことの顛末を投稿したところ、なんと人生初の10万超えバズをやってしまった。
ネットニュースからも取材依頼が来たほどだ。
当時のアカウントは、後に気分が変わって消してしまったが、ネットニュースのほうはまだ残っているんじゃないかと思う。
ツイートに寄せられたコメントには、
「私も同じ目に遭いました!」
「一人暮らしのおばあちゃんがいるので注意しておきます」
「そういうのをテンプラ詐欺といって、昔からあるんですよ」
などがあった。
昔からあるんかい!! と思わずツッコミを入れたが、何しろあの業界も闇が深い…。数々のコメントによれば、X新聞のみならず、他の新聞社にもそういう悪質営業は存在するようだ。だから一定の新聞社だけを注意しておけば大丈夫、ではないらしい。
自分がどことどういう契約を結んでいるのか、きちんと把握しておかないと、気の弱い人やお年寄りなんかはコロッと騙されてしまう。
これは新聞だけでなく、いろんなものに対して言えるだろう。
その後、両親のところに詐欺氏みたいなのがやってきたり、そういう電話もかかってきてはいないそうだが、先日、オレオレ詐欺のようなメールが初めて来たようだ。
あからさまにおかしな日本語で、海外の人間が打ったとわかる。
ていうか、うちに息子なんかいねーよ、って話だ。
これから日本が貧乏になると、ますます詐欺や窃盗、強盗などが増えていくだろうから、注意しなければなと思う。
最近はもう、知り合いと宅配業者以外は、インターホンを鳴らされても出ない。もし出ることがあったら、武器を持っておかねば…なんて考えている。そんな私の頭の中が、一番物騒かもしれない🔪