近所の騒音
夏休みが終わったからか、暑さが若干和らいだためか、近所でプール遊びをしている子を見かけなくなった。
先月はしょっちゅう見かけて、微笑ましい気持ちになったものだ。
けれど、微笑ましく感じられるのは、きっとお行儀よく遊んでくれているからなんだろう。ご近所のプール遊びを迷惑がる人と、子どもが騒ぐのは当然なのだから多めに見ろと主張する人たちが対立するのを、最近Xでしょっちゅう見かける。
私も、子どもの頃は家の前でプール遊びをしたし、花火だってしたし、なんならボール遊びもしていたから、結構うるさかったのではと思う。ただうちの近所は、同い年ぐらいのお子さんがいるご家庭が並んでいたので、お互い様という感じで皆許し合っていたのだ。
それに、ひょっとしたら、そんなにうるさくなかったのかもしれない。
というのも、近所のお姉さんたちが成長し、結婚して、お子さんを連れて里帰りすることが何度かあった。そうすると、やはり家の前で遊ばせることになるのだが、その音や声をうるさいと感じることはなかったのだ。
けれども人の多いところへ行くと、誰か殺されたのかと勘違いするほど、ものすごい奇声をあげる子がたまにいる。
そういう子が家の前で騒いでいると、私も頭を抱えたかもしれない。
窓を閉めてシャットダウンできるならいいが、それでも聞こえてくるなら悲惨だ。
子どもが遊ぶのは普通のことだと思う。
もし公園が近くにない場合、家の前にスペースがあれば、そこで遊ぶことになる。それも普通だろう。
でも、やはり限度というものはある気がする。
たとえばボール遊びをするなら、バスケットボールやドッヂボールのようなものではなく、柔らかいボールを使うとか。そうすれば音が響きづらいし、万が一、よその家の窓や車に当たったとしても、壊す可能性が少ない。
または、ほとんど音の鳴らないバドミントンにするとか。
何しろ、近所の人のことを考えた遊び方をさせる必要はあるだろう。
幸いうちの近所は大人しい子ばかりいるようで、外で遊んでいるのを見かけても、控えめにしか声が聞こえない。
それに、近くに公園もあるから、たぶんそっちへ行っているんだと思う。
とはいえうちも、実を言うと、少し前まで隣家の音に悩まされていた。
小さい子ではなく、18歳前後の男の子なのだが、そいつが一昨年ぐらいから非行に走りだしたというか、何しろ改造バイクをブンブン鳴らすようになったのだ。
ひどいときは30分以上もアイドリングをする。
おまけにガラの悪い仲間がやって来て、家の前で夜遅くまで喋ったり、煙草吸ったりもした。一番腹が立ったのは、深夜に家の前でバスケットボールをつきはじめたことだ。さすがに主人が怒って「うるさい!」と言うと静かになったが、うちの主人が注意したのはたぶん片手では数えられない回数だと思う。
何に腹が立つって、その息子本人もそうだが、親に対してだ。
うちの主人が注意している声を、何度か聞いたことがあるに違いない。それなのに一切注意せようとせず、一度顔を合わせたときなんかは、「いつもうるさくてすみません~(ヘラヘラ)」と言ってきた。
私もカチンときて、「そう思ってるならどうにかしてください」とでも言いたくなったが、波風を立てるのが嫌で言えなかった。向こうもそれを見越して言ってきたような気がする。だって本当に申し訳なく思っているなら、こっちに謝る前に、自分の息子に注意しないか?
しかし先月、ついに主人がブチ切れることが発生した。
深夜の0時近くだったと思う。私と主人が床につき、ウトウトとしはじめたところへ、「カンカンカン!」と大きな金属音が聞こえてきたのだ。
二人揃ってびっくりして、文字通り飛び起きた。
最初はうちの猫が何かイタズラをしたのかと思い、家の中を見て回ったが、みんな寝ているし何も起きていない。
それから家の前を見ると、隣の息子が懐中電灯を照らしている。そしてその父親が、バイクを何やらいじっているのだ。
親も一緒になって何やってるんだ! と、さすがに腹が立ったが、そのときには静かになっていたので、何も言わずまた布団に入った。
するとだ。またウトウトしはじめたときに、再び金属音が鳴ったのである。
主人もいい加減怒り心頭で、「うるさい!」と大声で怒鳴りつけた。
するとそろそろとバイクを移動させ、離れた場所で改造工事を再開したのだが、めちゃくちゃ離れているというわけではないので、若干音が聞こえてくる。
結局その騒音が原因で、その日はあまり眠れなかった。イライラさせられたせいもある。
すると翌日、当事者であったその父親さんが、菓子折りを持って謝ってきた。
息子からこれまでの話を聞いたのだろう。「今までもご迷惑をかけていたようで…」とも言われた。
謝ってくれた人をあまり悪く言いたくないのだが、深夜にあんな物音を立てるのは迷惑なことぐらい、怒られなくてもわかると思う。
けれどもどうやら、それを考えられない人というのが世の中にはいるようだ。自分の常識=他人の常識ではない。そのことがよくわかる一件だった。
以来、隣家はすごく静かになり、居心地が悪くなったのか例の息子も家を出たようだ。たまに帰ってくるが、すぐまたどこかへ行く。
私たちのせいで家を出たのかな…と思うが、まあ仕方ない。どこで誰と暮らしているのかは知らないが、また近所に迷惑をかけていなければいいなと思う。
人間誰だって完璧ではないから、自分でも知らぬうちに他人に迷惑をかけていることはあるはずだ。
でも、少しも配慮しないことと、配慮したつもりでも迷惑がかかってしまった、というのではだいぶ違う。ああ、こちらを気遣ってくれてるんだな、というのが感じられたら、多少カチンときても黙っておいてあげようという気になる。
だから結局、気遣いが大事なんだろう。
我慢してもらって当然とか、自分は何も悪くない! と開き直ることが、揉め事につながるように思う。
過剰に周りを気にする必要はないけど、時折でいいから、自分の周りを振り返って見ることがきっと必要なのだ。